2020-07-16

Leica M10-Rの発表 〜 諸々雑感

   2020年7月16日、Leica M10-Rが発表された。
   「R」と付いた機種名は、「解像度」から来ているという、4,000万画素機。


   早速にヨドバシカメラからもマップ・カメラからもレビュー記事が掲載され、その特徴が見てとれる。
   Leica独特の空気感の表現の妙、色づくりの妙、高画素の繊細さと相まって、たしかにLeicaの言うように「新たな次元」の「M」といった感じがする。
   レビュー記事の写真からは、被写体が話しかけてくるような、「主張する静寂感」を思った。画はしっとり感・瑞々しさが際立っても見える。Leicaのレンズ群の潜在能力を引き出して、新たな描写を見せてくれるのでは? と興味津々。

   [DC Watch] https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/1267335.html
   [Steve Huff] https://www.stevehuffphoto.com/2020/07/16/leica-announces-the-m10-r-high-resolution-m-camera-why-i-do-not-want-one/

   一方で、ごく淡々と思いを述べた記事も。
   Steve Huff氏のブログに:「これには興味が持てない。気持ちに直結するような写真を撮るのに4,000万画素機は必要じゃない。M10-Rは、Leicaの伝統や魂からすれば、むしろ後退したコンセプトなのではないだろうか。高画素機が欲しければα7IVを買えばいい。高画素機で撮ればクロップが自在だという意見もよくあるが、それは撮り手の表現力をじわじわ減退させる要因でもある。私にとっては2,400万画素もあればよいし、それがいちばんしっくり来る数値。振り返ると、これまでの思い出深い写真は、M8やM9や、M240で撮ったもの。Leicaは好きだし、これまでフィルムもデジタルも何機種も使ってきたし、「M」の形も好きで、ダイアルやボタンを操作して写真に至る達成感はこの上ないもの。Leicaは世間と競争しなくていいのに..。」と。

   (Steve氏の「クロップ」の指すところは概ね「トリミング」と同義のようだが、氏は、「クロップ」に「より気軽な」「手っ取り早い」といった意味合いを重ねているように感じる。)

   氏の思いの根底には、「高画素」=「クロップで作られる安易な写真の量産」という図式があるのだろう。
   思うに、「『素通しガラス越し』のような被写体との近さを感じられるレンジファインダーこそ、ノー・トリミングでの写真づくりが、またそこに挑むワクワク感が醍醐味なのに、安易に『トリミングしよう』とつい思わせてしまうカメラって、やっぱりレンジ・ファインダー機としては不似合いなんじゃないかな。」-- かな。
   そして「Leicaに期待するのは、Leicaの経験と技術でしか表せない「写真」であって、ハイ・スペックではない」という思い -- かな。 実際にSteve氏が使ってきたM8は1,330万画素しかなく、Sony a7S IIは1,220万画素しかない。 最も好んで使っている機でも2,400万画素でしかない。 ながらそこには手応えを感じている。 だからこそ、Leicaこそ、スペックではないものを追い続けてほしいのに -- かな。 「4,000万画素機 Leica M10-R」にはそうした違和感を感じているのだろう。

さて「4,000万画素」への個人的な感想:
写真の分野によっては高画素機が必要な方もあるだろうし、4,000万画素という選択肢ができたのは良いと思う。 「小さな『S』のような」というイメージかも。
4,000万画素機が発表された時、思っていたほどワクワクしなかった。 Steve氏ではないが、その時、これまで築かれてきた「Leica M」の世界と高画素とはあまり関係がないように思えた。
中判に準ずる価値を見出すなら、この「4,000万画素『M』機」にぐっと存在感が出てくる。 小さな「M」でありながら「645」に似た充足感。 「M10-R」、これなんだろうなぁ。 そう思うと、なんかいいなぁ。
4,000万画素機が更にLeicaのレンズ群の潜在能力を引き出し、また新たな写真の世界が出てきそうなところは楽しみ。
ダイナミック・レンジの拡張 - 実はこれが最も「面白さ」に繋がりそうだと期待してしまう。
今後はこうした高画素機が、2,400万前後の画素数のモデルと共に双璧のように、「M型」のひとつの「標準」になってゆくのだろう。
4,000万画素という大きなデータの取り回しは億劫なこともあるかも。
「主張する静寂」 --- 「静寂」と言っておきながら、どことなく画像に「そわそわ」したものを感じる。 電子のザワつきだろうか? 銀粒子にはない、若干の違和感を伴うざわめき。
インターネット上のレビュー記事を見る限りではさすがのLeica色。「まさに好み」と思いつつ、シャドーの階調に硬さを感じることがあったのが少し気になった。
M10-Pと同様の(「同じユニット」と書いている記事は見当たらなかった)静音シャッターとのこと、撮る度にあの音がするのは好感触。
ボディの革の模様がちょっと大柄かな。
M10-R、どんな持病があるのだろう? やはりここは心配。
M10-R、いつまでバッテリが市場に供給されるのだろう? やはりそれは気になる。

   実機を触ったわけではなくネット上の情報のみをかき集めた結果だが、あえてM10-Rの魅力ポイントを書き出してみると --- 1. 広ダイナミック・レンジ  2. Leica色  3. シャッター音  4. 「中判」を意識しての4,000万画素への期待  5. 多少の高感度撮影も可。
   あえてその逆 --- 1. 電池はいつまで供給されるのだろう  2. 持病や発作は当然のようにある(そしておそらく直らない)のだろう  3. 1ファイルのデータ量が大きい。

   余談 --- 高精細な画像を見慣れてしまうと、案外、画素の小さい方へはなかなか戻れないのかもしれないなぁ。