モノはGPS計測ユニットです。これと、ペンタックス独自と言われる手振れ補正機能 - 一眼レフ・カメラ内の画像素子(C-MOSセンサー)を動かすことで実現しているこの機能を組み合わせた、何とも大胆な、しかし非常に微細で繊細な技術です。(他社の手振れ補正機能はレンズに内蔵されている)
その2つを組み合わせて何をするかというと、GPSで測定した緯度・経度、カメラの姿勢を元に、画像素子を僅かずつ動かすことで赤道儀の働きを実現してしまうというもの。
三脚に固定しただけのカメラで星を長時間露光撮影すると、地球の自転のために星が円や弧状に軌跡を描いてしまいます。そのため、星を点として写すための露光時間はせいぜい数秒。しかしそれでは夜空にたくさんあったはずの星も、ぽつぽつとしか写りません。この撮影時間が、星の動きを追いかけながら、5分、10分と長くなると、ようやく星がたくさん光る「星空」らしい写真になるわけです。
そうした「星空」を写すために必要になるのが、星の動きを追尾する道具である赤道儀です。
赤道儀の働きは、例えば夜の星空を天体望遠鏡で見るときに、地球の自転に合わせて望遠鏡を逆回転させる... と言ってしまうと簡単そうですが、ひと晩で東を向いていた望遠鏡が明け方には西の方へ傾く程度の微妙なスピードと、取り付けられた望遠鏡が同じ星に向き続けるために細かな精度で動かすというもの。
その動きを、カメラ内部の画像素子を動かすことで実現してしまうのが、この「アストロ・トレーサー」なのです。
画像素子を動かせる範囲が限られていること、現段階ではGPSユニットに細かな調整機能を持たせていない事などから、赤道儀ほどの精度と柔軟さは無いようですが、赤道儀の重さや、水平を取って設置する手間や、北極星を見つけて設定する難儀さを思うと、天体写真ではなく、ちょっとした風景写真として星の撮影を楽しむには十分なのでしょう。
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/20110624_454521.html 開発秘話など Impress Watchの記事
* ペンタックスのウェブサイトより