Photokina 2014でMマウントの新レンズ発表のニュースが。 次こそ写真を掲載しようと思っていたのについまたレンズの話。
ZEISSから発表されたのはDistagon T* F1.4/35mm ZM。 これまでBiogonしかなかったこの画角でのDistagonの投入には「新しい価値観」のような期待感を持った。
後玉と画像素子の距離が短くても、画像素子に光がより均一に届くよう設計されているという。 メーカーのウェブ・サイトに掲載された写真を見ると、ごく素直で使いやすそうな写りで、気張らずとも気の利いた画を残してくれそう。 色のり・色の透明感・シャープさと、なかなか心地よく映る。 これなら筐体の大きさ・重さもそれほど気にならなそうだ。
(写真はZEISSのウェブ・サイトより)
(写真はZEISS、Steve Huffのウェブ・サイトより)
価格は$2,290だそうだ。 F1.4という明るさ故のやや高めの価格だと思うが、それでもSummiluxからは半分ほどの価格ではないだろうか。 妥当と感じるかはその価値をどこに見いだすかだろう。
そしてLeicaからはSummarit-M 35mm F2.4 Asph.、Summarit-M 50mm F2.4、Summarit-M 75mm F2.4、Summarit-M 90mm F2.4の4本が。
(写真はライカ社のウェブ・サイトより Summarit-M 35mm F2.4 Asph.)
上の画像はSummarit-M 35mm F2.4 Asph.だが、何と言ってもこのコンパクトさが捨てがたい。 Summarit-Mと言えば、2007年11月にエントリーモデルという位置づけだったと思うがやはりSummarit-M 4本が発売されている。 今回の、2014年10月の同名レンズの発売まで約7年というのは随分と短く感じる。 両者のコンセプトにはどんな差異があるのだろう。
VoigtlanderからもMマウント・レンズが2本、Super Wide Heliar 15mm F4.5 IIIとUltron 35mm F1.7が。
Ultron 35mm F1.7という、名前を聞く限りではDistagon F1.4/35mmとは対照的な渋みのある描写を思い描く。 印象は「影を追う攻めのレンズ」。 前玉の凹レンズも艶かしく、やや無骨な感じのする外観も妙に惹かれる。
Distagon F1.4/35mmと同じく、画質次第ではこの大きさはあまり気にならないと思うが、これよりひとまわりふたまわり小さいと常用にはありがたい。
(写真はVoigtlanderのウェブ・サイトより)
さてさて何とも悩ましい「35mm」レンズの世界。 以下まさに「雑感」---
Leica M8と一緒に手元にやってきたのはVoigtländer Color-Skopar 35mm F2.5-C。 安価ながらこのレンズ、M8との相性もよく、場の雰囲気をよく捉えてくれなかなか面白いのだが、同じように他のレンズにもそれぞれ特色があるので、時に使い分けたくもある。
M8シリーズにとって35mmという焦点距離は35mm判換算で約45mmにあたり、感覚としては50mm付近の標準レンズ的な使い方になる。 なのでよく言う「レンジファインダー・カメラには35mmが相性がよい」という「35mm」と、実は50mmっぽい「35mm」のふたつの意識が入り交じる奇妙な画角でもある。
どちらに軸足を置くのかで「35mm」の見え方が変わってくるのだが、この特殊なセンサー・サイズを持つ2つの機械は既に生産されておらず、いずれは35mm判フルサイズ・センサーのカメラで使うという想定が、さてどんな「35mm」を入手すると先々長く使える1本1本になるだろうかと迷いを呼んでしまう。
どちらであっても完成度の高いSummicronを頑張って求めるのが最も悩まず楽しめそうに思える。 次に悩まないのがSummarit-Mや、違った次元の楽しみを求めてSummiluxの選択だろう。
2007年11月に発売されたSummarit-M 35mm F2.5は、その抜け・キレ・写りの渋みからして常用レンズとして安心できる1本となりそうだが、その価格は「35mm」にしては高いと感じてしまう。 と言うのもこのSummarit-M 35mm F2.5、発売当初の市場価格は約15万円、今は値上げを経ての約22万円と、どうしても発売当時の価格を妥当と思ってしまう分で気持ちが遠のいてしまう。 新しいSummarit-M 35mm F2.4 Asph.も25万円前後のようなので、今回の新レンズの投入には市場価格を揃える意味もあったのかもしれない。
(写真はImpress DC Watchのウェブ・サイトより - Leica Summarit-M 50mm F2.5と35mm F2.5)
サクッとSummicron、Summilux、Summaritが買える懐具合なら悩まないのかもしれないが、そうも行かないところに市場の面白みがあったりもする。
実際に、新たに発表されたDistagon F1.4/35mmなどはSummiluxを意識しているだろうし、LeicaもZEISSもレンズの性格には大きな違いがあるため「似て非なる」この部分と、もうひとつ価格という消費者をくすぐる要素が織り込まれてくる。
多くのZEISSのレンズを生産するコシナは、この1〜2年でレンズの描写性能を格段に向上させているように見え、Voigtländer Nokton 50mm F1.5や今回発表のUltron 35mm F1.7も意欲的に向き合ってきた気合いを感じる。 またそうした今なので、ZEISS Distagon F1.4/35mmの完成度にも興味津々。
コシナのVoigtländerとZEISSのMマウントの「35mm」は、●Biogon F2/35mm、●C-Biogon F2.8/35mm、●Distagon F1.4/35mm、●Color-Skopar 35mm F2.5 PII、●Nokton Classic 35mm F1.4、●Nokton 35mm F1.2 Aspherical VM II、●Ultron 35mm F1.7と、現状7本となった。
いま所有しているのはC-Biogon F2.8/35mmとColor-Skopar 35mm F2.5-Cで、前者はそこそこ馴染んでいながらもカラー写真ではどこか乾いた感じのするシャープさと、なんとなく弱く感じる色のりなど、後者は時々画力(エジカラ)に弱さを感じるなど気になるところも。
Biogon F2/35mmは秀逸な"Carl Zeiss"レンズだがどこかしっくり来ず。 Nokton Classic 35mm F1.4はボケがざわざわと見えるのが気になり、Nokton 35mm F1.2 Aspherical VM IIは、外観の似たUltron 21mm F1.8の描写力が好印象だったつながりで興味があるのだが、レビュー記事を見ると「ぐっと重厚な」というよりはハイキーな調子が向いていそうな点と、ボケ味にNokton Classic 35mmに似たものを感じてやや不安も。 となるとUltron 35mm F1.7への期待は自然と高まる。
というわけで、機種は多いが選択肢が少なく見えてしまう諸々の「'f=35mm'の迷い」。
大きさ・価格ともに気軽に持ち出せる標準レンズ的な機動性を思うと、VoigtländerとZEISSからもコンパクトでより高画質な「35mm」レンズが欲しいとついつい思ってしまう。 特に所有している先の2機種には、そろそろ新設計で新登場の期待をしつつ、どこかもどかしかった「35mm」の市場は新たなフェーズへ踏み出した感もあり、うっすらとながら迷いの答えが見えて来そうな気もする。
2015.05.29追記:
Impress DC Watchに、Distagon F1.4 35mmのレビュー記事「デジタル時代の“新ディスタゴン”現る!!」が掲載された。