2012-09-13

雑感 ~ 映画フィルム生産終了

   東京新聞では2012年9月13日付、"WebDICE"では10日 9:29(PDT)での発表。
  富士フィルムが映画フィルムの生産を終了というニュースである。

   フィルムが表現する質感は、デジタル全盛の現在でも、あらゆるCMで使われ映画に多用されるように、その役割は大きいと思っていた。 つい3ヶ月前に「フィルムに迫る質感です」と、あるカメラのデモを見せてもらい、確かに感嘆はした。
   ここ数十年の時間の流れから客観的に見れば、「フィルム」は今は当たり前の存在に見えるが、実は「フィルム」にとって戦争や商業を通して急速に発展した20世紀は、ごく特殊な期間だったとも思う時がある。
   それは、フィルムがプロの現場で信頼を得たように、この先はデジタルが、単に媒体選択の問題ではなくいよいよ時代そのものになろうという、逆らい難い時流に迫られているという感覚を呼ぶ。

   フィルムにおける、光を化学反応で定着させるこの手法は実に情報量が豊かで、低温下であればその保存性も、現在世にあるあらゆる媒体よりも高いと言える。 その根拠の1つは、この半世紀ほど、物によっては約1世紀という期間での実績にあるわけだが、その世界がひとつの終止符を打ってきたわけだ。
   以下の東京新聞の記事にあるように、「国の文化政策」として、この分野の保護というのはあってもよいと感じる。

   こうなると一方、デジタル・アーカイヴという分野が、きちんと実用レベルと胸を張って言えなければいけない時期を迎えている。
   映像が淘汰で消えてゆくのは歴史の変遷だが、意図せずいつのまにか消えていた - では、マズい事も多々あろう。
   映像保存用のフィルムは生産を続けるとの事。 ただしこれは、デジタル上映非対応の映画館のために取った措置という話もあり、その継続性は数年の見通しという見方もあながち遠くないというところだろうか。 とりあえずの立ち位置である「保存用」だとして、今後も市場の原理には逆らえないという状況も出て来ようが、なんとかこの分野には頑張ってもらいたい。

   画像: 富士フィルム ウェブサイトより
   以下の記事: 東京新聞より


富士フイルム 映画フィルム生産終了
2012年9月13日 朝刊

   富士フイルムは12日、映画用フィルムの生産を終了することを明らかにした。国内で唯一生産していたが、来年春ごろをめどに終える。映画業界ではデジタル化が急速に進んでおり、採算が取れなくなったという。映画用フィルムには、主にカメラでの撮影用と映画館での上映用の二種類があるが、両方の生産から撤退する。
   映画業界では、映像の編集や加工、配給のしやすさなどからデジタルカメラでの撮影が広がり、フィルム需要が急減している。原材料価格の高止まりもあり、富士フイルムが七月に値上げを発表したところ、十分な需要が確保できなくなったという。富士フイルムは1934年の創業時から約80年間、映画用フィルムを生産してきた。ただ今後も、映画の長期保存向けに専用フィルムの生産は続けていくという。
   海外では、米イーストマン・コダックや欧州のアグフアなどが映画用フィルムを生産しているという。

文化失われる
   フィルムとデジタルの両方で映画を撮影した経験のある大林宣彦監督の話 残念というより悔しい。フィルムは「行間を読む」といったしみじみとした味わいの作品を生んできた。映画は科学文明が生んだ芸術なので、技術の進歩に伴う社会情勢の変化として、経済効率の悪いフィルムがなくなる事情は分かるが、映画文化にとっては大きな損失だ。フィルムとデジタルそれぞれに良さがあり、選択肢があることが豊かな文化だ。文化が失われる象徴的な出来事であり、企業も犠牲者だ。国の文化政策に関わる問題ではないか。

   以下の記事: WebDICEより
   EXCLUSIVE: Fuji has given us some detailed information about its plans following our exclusive report Friday that it will stop manufacturing motion picture film.
   The company, which handles about 20% of studio business, says that “due to the significant demand decrease resulting from digitalization in the industry,” Fujifilm plans to discontinue “some items” in its motion picture film products. Fuji says the discontinuation date has not been determined.
   Products to be eliminated include Color Positive Film, Color Negative Film, B&W Positive/Negative Film, Intermediate Film, Sound Recording Film, and High Contrast Panchromatic Film. But the company says it isn’t closing the entire motion picture department. It will continue to provide archive film stock (ETERNA-RDS, which won the Academy Scientific Engineering Award in 2012), lenses for shooting cameras and screening devices, media for data storage, digital data archive services and its on-set color management system (Image Processing System IS-100). Film “is considered the best solution for archival preservation,” which is why it will continue to make the ETERNA-RDS stock, Fuji says.