(写真は Impress DC Watch より)
レンズ云々の話題はもういいだろうと思っていたら... ZEISSから新レンズが発表されたというニュースを見てしまった。
2013年10月 7日に発表されたOtus Apo Distagon F1.4/55mm T*と同じくコシナ製だろう。 Otus 1.4/55mmは展示会で触れる機会があり、その画質も構えた感触も上質だった。 レンズ構成はDistagonで、収差を徹底的に追い込んで高画質を得たというその価格は約$4,000。
それと同様にOtus 1.4/85mmの価格も相当なものだろうと思って素通りしかけた。 のだが、レンズのヘリに「Planar」の文字を見つけてつい立ち止まった。 「F1.4/85mm」と「Planar」の組み合わせ。 これはなかなか魅惑の響き。
この組み合わせにつられて記憶が1つ浮かんできた。 それはレンズに使うガラス素材の話で、かつてのCONTAXのCarl Zeiss T* Planar F1.4/85mmは、同じレンズながら「Made in Japan」と「Made in West Germany」とで画質に違いがあり、その理由がガラス素材の違いだという。
なるほど使ってみると、後者のほうがガラスの透明度が高いように感じ、一般に言われる「ヌケ」とはまた違って、たっぷりじっくりすっきりと光を透過させるレンズ群は、被写体の質感と実体をストレートにフィルムまで届かせ、それでいて色彩はしっかりと乗ってくる。 「Made in Japan」の方は、それよりも僅かに透過する光が減衰しているように感じた。 この「ストレートさ」の弱まりは、あれこれ考えてみた結果ガラス素材に含まれる不純物ではないかと勝手に想像している。
それとこの「Made in West Germany」のもうひとつの面白さは、遠い異国気質を手にしている愉快さと満足感、遥か彼方へ続く空の広さを感じられる不思議な存在感だった。
Otus Apo Planar F1.4/85mm T*のガラス素材はどんなものが使われているのだろう。 Otus 55mmは同社のZMシリーズの描写に傾向が似ていたので、おそらく材料としてはそれほどバリエーションは無いのだろう。 ただこの2本のOtusは、現行'ZEISS'の最高性能として徹底的に作り込まれているわけで、所有したときのその愉快感・満足感とは実際どんなものだろう。
(写真は Impress DC Watch より)
2013年 7月に発表された「Apo Sonnar T* F2/135mm」も「Apo」つながりで思い出した。
雑誌やネットでの作例を見ると、なんとも言えない軟かな調子と線の細い輪郭、ボケの滑らかさなど、独特の世界が広がっていた。 あらゆる被写体の表面は、まるで「油面」と呼ばれる極めて目の細かなヤスリで職人さんが丁寧に仕上げたような滑らかさであり、流れるような光の繋がりには目を見はった。
久々に作り手の気迫を感じる1本だと思った。