touitやLoxiaの存在感、それ以前のCONTAX、SONY、COSINAといったスチル・カメラ用のCarl Zeissにぼんやりと想いを巡らしてみると、現行"Carl Zeiss"で記憶の中の"Carl Zeiss"にいちばん近いのはソニーではないかという気がしてくる。
(ソニーのウェブサイトより: Sony FEレンズ - Carl Zeiss Sonnar T* 55mm F1.8 によるサンプル画像)
レンズ開発の過程ではカール・ツァイスから「MTF曲線がどうの」などの注文が付き、数値をクリアしたレンズは「T*」コーティングを施されて"Carl Zeiss"や"ZEISS"の名を冠するのだろう。 近年のそうした「基準クリア」レンズ群にはなんとなく不足しているように思う「瑞々しさ」が、ソニーの"Carl Zeiss"にはあるように感じる。
「ソニーの"カール・ツァイス"は自社設計・自社生産」だと言うが、タムロンから多くのレンズが供給されているメーカーでもあり、旧ミノルタの技術陣も腕を振るうメーカーである。 ミノルタはライカとの共同開発の経験もあり、レンズ設計にはコントラスト・ボケ味・輪郭の線といった視野も大いに加味されていることだろう。
ソニーの"Carl Zeiss"レンズからそうした様々な「事情」が多少は匂うものの、「これツァイスです」と言われてあまり違和感を感じない。
(ソニーのウェブサイトより: Sony FEレンズ - Carl Zeiss Sonnar T* 55mm F1.8 の外観。 実機は意外と小型軽量)
(ソニーのウェブサイトより: Sony-Carl Zeissレンズのラインナップの一例)
以下はソニーのウェブ・サイトに掲載されている作例で、Sonnar T* E 24mm F1.8 ZAによるもの。 35mm判フルサイズ・センサーに対応したFEマウントのSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAやSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSSなども同様の描写・発色傾向だろう。
(ソニーのウェブサイトより: Sony - Carl Zeiss Sonnar T* E 24mm F1.8 ZAによるサンプル画像)
(ソニーのウェブサイトより: Sony - Carl Zeiss Sonnar T* E 24mm F1.8 ZAによるサンプル画像)
なぜかSonnarとTessarが多用されているのがSONY-Zeissの特色。 描写トーンにソニー的な統一感を持たせるためなのか、多少なりと小型軽量化のためなのかその狙いはわからないが、ソニー独自の「Carl Zeiss風味」の出し方をうっすら感じつつもPlanarがないのは寂しい気もするし、将来Distagonが発売される期待があったりする。 小型なミラーレス・カメラでのスナップ用として、かつてRolleiの得意技だったSonnar 40mm F2.8 HFTのようなレンズや、Minolta CLEとセットだったLeica Summicron-C 40mm F2.0のようなコンパクトなレンズがあってもよいとも思う。
クセはなく、でも特徴はしっかり出る画作り、そこそこカメラ任せのAF・AEで使えてしまう手軽さ。 カメラのファインダーが電気仕掛けなのを除いては「こういうZeissもあっていいかも」と思ってしまう。
現行の"Carl Zeiss"・"ZEISS"としては、SONY製がしっくり来ている今日この頃。