2014-12-16

Cosina Carl Zeiss T* Biogon F2.8/28mm


   秋ももう終わり。 暖冬の見込みという予報だったが、「例年より寒い」という声が多い。 一方、道端の草や街路樹を見ていると、昨年ほどの冬支度はしていない。 この冬、一度くらいは大雪の日もあるのかもしれないが、案外はやく暖かくなってくるのではないだろうか。

   さて、コシナ製のCarl Zeiss Biogon F2.8/28mm。
   購入して数年、ずっとその写りには「Carl Zeissらしからぬ」という違和感を感じていた。 枚数多く撮ると気になってくる程度だが、薄皮を被ったように色のり弱くモヤっとした風や、遠景に写った建物の直線・輪郭線がこぼれた刃のようにざらざらと見えたり、解像感・立体感のないベタっとした描写が見られ、「気が向いたら使ってみようか」という存在になっていた。 ならばとElmarit-M 28mm F2.8 Asph.を購入したほど。 Elmarit、これはこれでアクリル絵の具で描いたようなエナメル質のベタっとした色再現がどことなくしっくり来ず。 ながら解像度や質感描写は独特の秀逸さがある。 しかもかなりコンパクトで利便性が高い。
   この秋、このBiogon F2.8/28mmはコシナへ修理に出した。 購入から約2年でグリースが抜けてヘリコイドの動きがスカスカになってしまったからだ。 このまま使い続けるとカムが削れて精度が下がったり、その削りカスがレンズ内部に入り込まないとも限らない。 とりあえずグリーシングは最低限必要かということで長野送りに。
   見積り案内の電話では、以前聞いていたグリーシングの値段の約2倍になるとの話。 作業内容はグリーシングの他にMTF調整と各部点検だと言う。 合わせてビュー・ファインダー1コ分くらいの値段だったが「時々気が向いたら使う」レンズにしては高価に感じ、「グリーシングだけで十分だ」とも返答してみたが、電話の向こうの声のトーンが気になり、それら諸調整も含め「進行」とした。
   そして、却ってきたBiogon 28mmはまるで別のレンズになっていた。 というと大袈裟かもしれないが、色のりよく、輪郭の細い線も曲面の表現も滑らかになり、立体感も解像感も実に気持ちよく、抜けもよい写り。 これがコシナ製Biogon F2.8/28mmのそもそもの設計なのだろう。 そういえば「MTF調整」と言ってたなと思い出し、もともとこのレンズはフィルム・カメラ用に設計されているのも思い出し、もしかしてデジタル・カメラ用に生まれ変わったという事か!? と思った次第。
   MTF曲線はレンズの設計段階で追い込むことが出来るものと思っていたが、製品になって以後にいじれるものだろうか? ...という疑問はさておき、今はElmarit-M 28mm F2.8 Asph.が「時々気が向いたら使ってみよう」になってしまっている。