2014-06-20

Levorg


   2014年 6月20日、スバルからLEVORGが発売される。

   そして、日本国内からは「レガシー」という、これまでの旗艦機が姿を消すことになる。
   レガシーは1989年に発売された。
   「スバル」の名を持つ富士重工業株式会社は、前身である中島飛行機製作所として戦闘機や偵察機を作っていた。 戦後は余った飛行機用のタイヤを用いて「ラビット」というスクーターを作り始めたのが車両製作への入口だったようだ。 その後は大型車の開発を目すも資金繰りがつかず、結局は360c.c.のエンジンを載せた小型車の生産を始める。

   国内市場を見渡すと、近年大型化の一途を辿っていた普通乗用車はいよいよ適度なコンパクトさを模索しはじめたように思う。 この「レヴォーグ」もしかりで、次第に大型化してきた「レガシー」を北米仕様として差別化し、程よくコンパクトに、ほどほどスポーティーに日本国内向けにパッケージングされた感がある。


   こちらの写真(上) は「レガシー」の直系子孫である「アウトバック」の2014年モデル。 もともと「Outback」は「レガシー」の中でも車体・エンジンともに大振りのツーリング・ワゴンに付けられていた名。

   こちら(写真 下)は「レガシー」の名が継承される「LEGACY」2014年北米モデル。


   同社は「スバル360」に始まり、やがて大きめのボディを持つ「スバル1000」などを生産。 1970年代、1980年代は「レオーネ」など1,600〜2,000c.c.のセダンとワゴンを発表。
   また、普通乗用車への前輪駆動や四輪駆動の採用、低重心・好バランスの追求、ツーリング・ワゴンという分野への取組み、CVT(無段階変速ギア)の搭載など、意外にもこれらは他社に先駆けて導入され、こうした特徴が受け入れられてか市場は序々に北米重視へとシフトした。 AWD (All Wheel Drive)のツーリング・ワゴンは特に北米の西部の寒冷地で人気が高かった。
   しかしこの市場動向への傾注は、足元である日本国内の経営には少なからず影を落としてしまう。


   その低迷の中に、「伝承」という意味である「レガシー」の名で、市場に好まれる仕様を強く意識した新機種を開発したのだった。 売りは「10万キロ速度世界記録」という、10万キロを高速走行しての確かな性能と耐久性。 富士重工の自動車部門の生き残りという、社運をもかけての一大計画だった。
   それまで「速いクルマ」というのは見るからに速そうな姿だったが、このレガシーは、「ワゴン車」と言えば商用車だった時代に、「ワゴン車」でありながら次々と「速そうなクルマ」を負かす加速性を備えていた。
   また、飛行機のエンジンに由来する「水平対向エンジン」はクルマの重心を低くとる事ができ、速いだけでなく操舵にも独特の面白さを見いだせる。


   スバルには「アルシオーネSVX」(写真 上)というツーリング・カーとでも言うべき車種がある。 3.3L 6気筒と、発売された1991年当時としては大きなエンジンを積み、一見スポーツ・カーと呼んでしまいそうなクルマであったが、あくまでも「グラン・ツーリスモ」の底流を汲み、その、より遠くへ・より早く・より安全に旅を楽しむという「クルマ」の捉え方は、長年変わらぬ開発思想でもある。


   伝承される開発思想 - レヴォーグもしかりであろう。 コンセプトらしき一文がウェブ・サイトに。 なるほど。



   雑感として、風貌は精悍ともやんちゃとも見てとれ元気な印象は悪くない。パワー、燃費、室内空間も申し分なく、走りも極めて高度に素直なのだろうと想像するパッケージング。 だが、右耳の後ろあたりでモヤモヤする違和感がある。 たぶんそれは、キレイにまとめ過ぎちゃった感と、「グラン・ツーリスモ」というよりは「ファミリー・カー」の匂いのするところだろう。 「生活感」は想像できるが、クルマと人の「ストーリー」には遠い。 それは、現在のスバルが選択しなければならない方向性の、ひとつの表れなのだろう。